人はどれ程の苦痛に耐えることができるのであろう。
人はどれ程の苦痛を経てどれだけの筋肉をその身に纏うことができるのだろう。
人が驚愕するその筋肉を得るためにどれ程の苦痛に耐えてきたのだろう。
人はなぜ麻薬的な筋肉増強の世界に陶酔するのだろう。
痛みに耐えうる者だけが究極の筋量を得ることができる。
そう、それこそが究極のペインゾーンである。
ここでは時空さえも歪めてしまうほどの圧倒的筋量が支配する世界。
記憶ではこれについて記述された雑誌記事はマッスルアンドフィットネスのビクター・リチャードに関するものだけだ。
ビクター・リチャードのトレーニングについて語るとき。
それは自分の常識が全く通用しない世界であるということを認識しておいて欲しい。
上腕囲は60cmを遥かに超え、大腿部は90cmをも超える超人。
しかし数値だけで彼を判断してはならない。全身がバランス良く発達した筋肉の塊で覆われているからこそ、彼の肉体が発するインパクトが凄まじいのだ。
そして、そのトレーニングたるや・・・
午前中をまるまる使ってレッグプレスをする・・・。
想像してみてほしい。自分の脚が化け物のように膨れ上がり、力を入れることもままならず、モンスターパンプが全身を駆け巡る。何千レップ繰り返すことができるだろう。心臓はこのパンピングアイアンを支えるため無限に鼓動することを余儀なくされ、それでもペインゾーンに身を置く限りはこのモンスターパンプと戦い、そして勝たなければならないのだ。
レップに次ぐレップ。大腿部の筋肉は悲鳴をあげ、ウェイトを上げるために臀部もハムストリングスもカーフもすべての筋肉が総動員される。これはただのレッグプレスではない。ウエイトが勝つか、あなたが勝つか。
壮絶な死闘の末、最後のレップを完遂させる・・・。とどこからともなく声が聞こえてくる。「まだだ。」
あなたは再びウエイトを下ろし始める。これを何度も、何度も繰り返す。血の流れが大腿部を破裂させるのでは?と感じるほど皮膚は張り裂けんばかり。筋肉はカンカンにパンプアップしている。
最後には完全にパンプアップし切った大腿部はもう血の入り込む余地がないほどに膨れ上がり、血管は触れば破れそうなほど張りつめている。下半身すべての筋肉がこのような状態になって初めてあなたは満足する。
いや、満足する?
「まだだ」心の奥底から声が聞こえる。
そしてあなたは再びウエイトをおろし始める・・・
これを求め行く魂の叫び。果てなき渇望。
究極の筋量を得るためには究極のトレーニングをその身に課さなければならない。